MENU

乳がん増殖に関係が深い受容体を狙い撃ちするトラスツズマブ(ハーセプチン)

乳がんは数ある固形がんのなかでも、抗がん剤治療が有効ながんに分類されます。従来、アドリアマイシン、エピルビシンなどのアントラサイクリン系薬剤、エンドキサン(シクロホスファミド)の2剤、次いでフロオロウラシル(5-FU)関連経口薬が使用され、併用することで転移・再発性乳がんに対して約50%の奏効率を示します。

ハーセプチンの点滴投与

その後、タキソール(パクリタキセル)、タキソテール(ドセタキセル)などのタキサン系薬剤が登場し、上記のアントラサイクリン系薬剤が効かない場合でも約50%の奏効率を示します。

抗がん剤は正常な細胞にも影響を与えるため、粘膜や毛母細胞、血液などがん細胞と同じように細胞分裂が盛んな臓器に悪影響を及ぼし、吐き気や脱毛、下痢、口内炎、白血球の減少などの副作用が現れるという問題がありました。

そんな状況のなか、現在最も注目されているのは、がん細胞に特有の性質を標的にして、その部分を狙い撃ちにする「分子標的薬」です。乳がんでは、乳がん増殖と密接な関係にある受容体「HER-2たんぱく」を発現しているタイプの乳がんに対し、HER-2たんぱくを集中攻撃するハーセプチン(トラスツズマブ)という薬剤が開発され、大きな成果をあげています。

2009年には、トラスツズマブと同様にHER-2の増殖を阻害するタイケルブ(ラパチニブ)も承認されました。ハーセプチンは点滴ですが、タイケルブは内服薬という違いがあり、同じく内服薬であるゼローダ(カペシタビン)との併用での使用も承認されています。

分子標的薬は、理論上はがん細胞だけを狙い撃ちすることになっていますが、副作用が全くないというわけではなく、ハーセプチンの治療を受けた患者さんの約40%は、最初の投与の後に発熱や悪寒が現れます。頻度は稀ですが、呼吸器障害が起こることもあります。また心臓の機能が損なわれて、動機や息切れなどの症状が現れる「心不全」に陥る患者さんもいます。したがってハーセプチンを投与する際は定期的に心臓のチェックを行います。

分子標的薬による治療は高額な医療費も問題となります。例えば、術後療法でハーセプチンを使用すると1か月で11万円となり、健康保険で3割負担だとしても年間に換算すると決して安い金額ではありません。費用の問題は、1か月の医療費が一定金額を超過した場合、超過分が戻ってくる「高額療養費制度」を活用したり、入院している医療機関の医事課やソーシャルワーカーに相談してみましょう。